我が家に来た母は不思議なほど「泥棒がくる」とは言わなくなっていた。 やはり、一人暮らしはさみしかったのだろう。 思いのほか家事ができなくなっていた母、２ヶ月くらいは、針仕事ができたが、散歩（徘徊？）をしはじめてから、針仕事にはいっさい手を出…

ある日、私は、食事の支度をしていた。母は針仕事をしていると思っていた。さきほどまで、座布団カバーをぬっていたので・・・。 突然、バタンとドアの閉まる大きい音がした。 あわてて、母の部屋をのぞくと、部屋は片付いている。母が出て行ったのだ。 すぐ…

わたしは、日曜日出勤である。日曜日に夫に母の世話をすべて頼むのはやはり、気を使う。 デイケア先は、日曜日は、休みであった。ケアマネージャーさんが言うには、「日曜日にやっているデイケアセンターがある」とのこと。早速、手配してもらった。契約にき…

母が退屈だろうと針仕事を頼んでいた。 私が、家にいない時間すればよいと思っていた。どのくらいできたかきいてみると箪笥の引き出しから出してくる。若いころ、人様のものを縫うくらい腕のよかった母、針目は大きくなり、留めをしなければならないところも…

一人暮らしのとき母は一日２時間くらいかけてすみから、すみまで新聞を読んでいたそうである。 だから、社会の移り変わりに詳しかった。わたしは、母は衰えないものとおもっていたから、母が新聞の内容について何時から話をしなくなったか、記憶がない。 我…

おやつにカステラを買ってきた。「好きなときに切って食べて」と小さな果物ナイフをわたしておいた。 その夜、仕事から、９時半ころ帰ると夫が「お母さん、お祖母ちゃんがトイレに何度もいってるようだ。トイレまた、汚してるようだ」と言う。行ってみると、…

一人暮らしの老人が買い物に行く。計算ができなくても、店に人は老人が財布をひっくりかえして、「ここからとってください」と言えば計算はすむ。老人は一人で買い物ができるということになる。このごろはスーパーに行けば、料理をしなくても食べられるもの…

わたしの休みの日は母と一緒に家の近くの神社に行ったり、団地のいろいろの棟をみてまわったりした。 きれいな景色を見ても、感動はしないようだった。 見たこともない景色だったから、なじめなかったのだろうか？ ある日、一緒に散歩にでて、ゆるやかな坂道…

母は夕食をすますと、横になり、デイケアに行った日とか、わたしや夫が散歩といいつつ、かなりの距離を歩いた日はすぐに、家で針仕事をしていた日はいつの間にか寝ていた。 早い日は午後６時ころ、おそいと９時くらいだっただろうか、 だから夜２時か３時こ…

母が我が家に来た次の朝トイレがぬれていた。 時には失敗するかもしれないと思い掃除をしておいた。 夕方、夫が「お母さん、トイレがよごれていて、使えない」と言う。 今日２回目だ。そういえば、「下着がゴワゴワしていたな。きっと１人でくらしてたときか…

しかし、わたしは会社へいっているのである。週二日わたしが休みで、週二日デイケアに行く以外、母は夫と２人で過ごすのである。夫はいつも母と話をするわけではないだろう。自分のペースで生活するだろう。まして、今の母に１人で留守番してもらうのは心も…

母が我が家に来た日、母に調味料を見せた。「こんなにたくさん買って家計がもてない。わたしがしっかり管理してあげるから」と言う。「酢、しょうゆ、味噌、砂糖だけでいい」と言う。焼肉のたれとか冷しゃぶのたれ、ドレッシング、ごま油などがある。もう母…

わたしは、後のことを夫に頼んで、仕事にでた。 デイケアの送り迎えは夫がやってくれた。 朝１０時すぎに送り出して、帰宅は５時半くらい。県庁所在地まで用事ででかけていても４時には出発しなければならない。一定時間に電話するのさえしんどかったわたし…

母が私の家に来た翌日、デイケアをお願いしていたＳ会の管理者とケアマネさんがきて、利用の契約をしていった。 タオル、バスタオル、下着の替えなどそれぞれ名前をつけて鞄（鞄にも名前をつける）にいれてもってくるようにとのことだった。 「明日１０時過…

今度の引越しで夫は「僕が迎えに行く」といってくれたが、母が夫に気を使うのが目に見えていたので、１人でしてしまった。 翌朝送り出した荷物が届いた。早速整理。 箪笥を定位置において、その中に衣類をいれ、お仏壇を安置し、食器は食器棚にそのほかそれ…

母は「伯母さんが送ってくれなかった」という。 伯母（母の姉）は隣町にすんでいて、母が普通のころは、母の家の近くのスーパーまで買い物にきて、よくそのスーパーで長話しをしたそうである。 母が私と住むことに決まって２人で会ったそうである。「もう、…

引越し当日、近所のかたがたが餞別を持ってきてくださった。母は、近所の方々と、元気なころはいい関係を持っていたのだと思った。 一人で生活できないこと教えてくれたＫ子ちゃん「送らないよ〜！おばちゃんはあたしをあまり好きじゃなかっただろうし、minm…

次は仏壇である。母は夫に気兼ねして「そのまま置いておく」と言った。 しかしいくらなんでも仏壇を捨てると同じことはできない。もしものことが母にあったら、仏壇をまもれるのは、わたししかいないのだから。「もちろん、もって行くよ」と言ったときの母の…

母と一緒に住むと決めて、次に帰省したとき、引越しの準備のため、電話、ガス、水道を引越し当日止める手続きをした。それから、１人暮らしの老人のための緊急電話をひきとってもらうための手続きもした。かかりつけのドクターに今我が家でかかっている先生…